0776-50-6963
受付9:00~17:00(平日)
業務紹介
事前調査とは
既存建築物や工作物を解体・改修する場合に、石綿含有建材が使用されているか否かを確認するための調査を 「事前調査」と呼びます。
「労働安全衛生法 (石綿障害予防規則)」 と 「大気汚染防止法」 により義務付けられています。
労働安全衛生法
(石綿障害予防規則)の規定
第3条 事前調査及び分析調査
事業者は、建築物、工作物又は船舶の解体又は改修 の作業を行うときは、石綿による労働者の健康障害 を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物 又は船舶について、石綿等の使用の有無を調査しな ければならない。
大気汚染防止法の規定
第18条の15 解体等工事に係る調査及び説明等
建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴 う建設工事の元請業者は、当該解体等工事が特定工 事に該当するか否かについて、設計図書その他の書 面による調査、特定建築材料の有無の目視による調 査、その他の環境省令で定める方法による調査を行うとともに、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
工事の対象範囲の建材を網羅的に調査し、石綿含有の有無を確認します。
事前調査に関連して、発注者への説明や都道府県知事等への報告などを行わなければならず、これらを法規に 基づいて実施する必要があります。
令和4年4月1日から、建築物等の解体等を行う前に実施する石綿含有建材の調査結果を都道府県等に報告する必要があります。
(大気汚染防止法 第18条の15 第6項)
調査の義務以外にも報告の義務や工事する際の掲示の義務等、様々な法規制がありますので十分に確認するよ うにお努めください。
石綿障害予防規則第3条に基づく事前調査の流れ
調査業務
書面調査
図書等調査
設計図・竣工図(特記仕様書・平面図・立面図等)・改修図等を参考に竣工・改修履歴、利用状況、調査上の留意点を確認します。
不明な点があれば「ヒアリング」を行います。
書面調査調査
平面図に事前調査箇所(部屋)をナンバリングして、現地調査を行う際の動線計画を立てます。
各室(階数・部屋名)・各部位(床・壁・天井等)ごとに行うので、設計図書から得た書面調査情報を整理した整合性の確認表を作成します。
書面調査結果をもとに実際の現場で使用されている建材を確認し、分析が必要な試料の採取を行います。
石綿含有の有無の仮判定
国土交通省及び経済産業省が公表する「アスベスト含有建材データベース」等や関係機関、製造企業等が提供する各種情報を活用して石綿含有の有無を仮判定しておきます。
現地調査の準備
以上の現地調査に必要な資料や道具等を準備して現地調査に臨みます。
現地調査
事前確認
周辺施設や外観、経路、建物内の状況等の確認を行います。
書面調査結果との整合性確認、写真撮影、建材の裏面確認、劣化程度の観察等を行います。
平面図がない場合、当社で簡易的な図面の作成も行います。
試料採取
保護具や採取に適した工具等を使用し、試料を採取します。
似ている建材が存在するので、注意が必要です。
同じ階層や同じ構造というだけでは、同一建材を使用していると判断できないのでしっかりと確認していく必要があります。
色・模様等の微細な違いがある場合も同一建材と判断できない為、採取します。
片付け・清掃等
HEPAフィルター付きの掃除機で採取後の作業場を清掃します。
現地調査作業終了後の作業
-
調査内容の整理
-
分析用試料の整理 等
分析調査
アスベスト含有の有無が不明な建材については、分析を行って判定します。
詳細については「分析業務」で説明しています。
結果報告
「調査結果報告書」と「分析結果報告書」等の「事前調査報告書」に必要な書類を作成して依頼者にお渡しします。
分析業務
ここではどのようにアスベストの有無を判断しているかの紹介をします。
偏光顕微鏡
分析
STEP.6
浮遊沈降
STEP.5
酸処理
STEP.4
層別化
灰化
STEP.3
実体顕微鏡
予備観察
STEP.2
試料受入れ
STEP.1
STEP1. 試料受入れ
受取った試料に関して、受入れ可能な状態かどうかや「分析依頼書」との相違がないか等の確認を行います。
STEP2. 実体顕微鏡 予備観察
肉眼と実体顕微鏡にて予備観察を行います。
繊維の有無や繊維の仮同定を行います。
写真:実体顕微鏡でケイカル板を観察
STEP3. 層別化・灰化
試料ごとに層が確認できた場合、層ごとに分解して分析を行います。
有機物を取り除くために、485℃で分析対象試料を加熱します。
写真:聚楽ボードの断面写真
写真:複層仕上塗材の断面写真
STEP4. 酸処理
繊維に付着している不純物や成分を除去するために塩酸を加え、アスベストを検出しやすくします。
STEP5. 浮遊沈降
試料の種類によっては、砂利や砂粒等の大きい粒子が混合している場合があります。 それらは水中でアスベストよりも速く沈降するので本工程により除去することが可能です。
STEP6. 偏光顕微鏡分析
光源から出た光を偏光させて対象物を照射し、レンズやコンデンサの切替え、ステージの回転によって対象物の光学的特性を観察します。
実体顕微鏡の仮同定の結果に基づいてプレパラートを作成して、アスベストの光学的特性と照らし合わせて同定を行います。
観察は100倍(接眼レンズ10倍×対物レンズ 10倍)で行い、繊維の細部をより詳細に調べたい場合には対物レンズを40倍に切替える等して高倍率で観察を行います。
偏光顕微鏡でアスベスト繊維を同定する際には以下の項目を観察します。
-
形態
-
色・多色性
-
複屈折
-
消光特性
-
伸長の符号
-
屈折率
写真:偏光顕微鏡
写真:クリソタイル
以下に、一部の特性についての説明をします。
色・多色性
色と多色性は、オープンポーラで観察します。
多色性を有していると、繊維の長さ方向(垂直方向)に振動する光と幅方向(水平方向)に振動する光で異なる色を示します。
クロシドライトは、強い多色性を有しており、垂直方向で灰色、水平方向で青色を示します。
写真:オープンポーラでクロシドライトを観察(青色)
写真:オープンポーラでクロシドライトを観察(灰色)
消光特性
クロスポーラでアスベスト繊維を観察すると、1回転する間に90°ごとに4回繊維が消えます。(消光)
繊維の伸長方向とポラライザやアナライザの振動方向が一致しているときに消光することを直消光、角度をなして消光するものを斜消光と呼びます。
クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、アンソフィライトはいずれも直消光します。
トレモライト、アクチノライト、リヒテライト/ウィンチャイトは直消光と斜消光の両方があり得ます。
アモサイト 反時計回りに
45°回転して直消光
写真:クロスポーラでアモサイトを観察
写真:アモサイトの直消光(垂直)
伸長の符号
伸長の符号は、クロスポーラに鋭敏色検板を挿入したときの繊維の色から判断できます。
伸長の符号の正負で、それぞれの色は以下のようになります。
伸長の符号が正の繊維 : 北東―南西方向で青緑色
北西―南東方向で橙黄色
伸長の符号が負の繊維 : 北東―南西方向で橙黄色
北西―南東方向で青緑色
写真:クロスポーラ+鋭敏色検板を挿入して
クリソタイルを観察
伸長の符号:正(青緑色)
写真:クロスポーラ+鋭敏色検板を挿入して
クロシドライトを観察
伸長の符号:負(橙黄色)
写真:クロスポーラ+鋭敏色検板を挿入して
クリソタイルを観察
伸長の符号:正(橙黄色)
写真:クロスポーラ+鋭敏色検板を挿入して
クロシドライトを観察
伸長の符号:負(青緑色)
クロシドライトは、唯一伸長の符号が負となるアスベストですが、300℃以上の加熱を受けると伸長の符号の正負が逆転する場合があります。
屈折率
アスベスト繊維の屈折率は、分散色の観察により確認できます。
①分散色を確認したい繊維を消光位におく。
②昼光色補正フィルタとポラライザ以外のすべてのフィルタ類を光路から外す。
③分散染色用対物レンズに切替える。
④コンデンサを分散染色用のコンデンサに切替える。
分散色を観察することで、粒子・繊維の屈折率と浸液の屈折率との関係を以下のように知ることができます。
a) 繊維の屈折率 >> 浸液の屈折率
b) 繊維の屈折率 > 浸液の屈折率
c) 繊維の屈折率 = 浸液の屈折率
d) 繊維の屈折率 < 浸液の屈折率
e) 繊維の屈折率 << 浸液の屈折率
: 白色
: 紫 ― 赤 / 橙色 / 黄色
: 濃青色 ― 赤紫
: 青 / 青 ― 緑
: 白色
写真:オープンポーラ+分散染色用レンズ
クリソタイルを観察
分散色:青色
写真:オープンポーラ+分散染色用レンズ
クリソタイルを観察
分散色:赤紫色